Thinking In The Past.

歴史とリーダーシップ

2015.05.01

ライフネットの出口会長と対談をした。とても含蓄があるお話が多く、二日ほど経った今もいろいろ思い返しては自分なりに考えている。特に心に残っているのは冒頭の質問に対する答えだ。質問は要約すれば”リーダーが時代を作るのですか、時代がリーダーを作るのですか”というもの。

”歴史を振り返ると、もちろん実力はありますが、リーダーになれるかどうかはほぼ運だったのではないかと思います”

と出口会長はおっしゃった。例としてナポレオンが権力からは程遠いポジションで、しかも支配者側に恋人がいたから生かされたことを挙げられた。

テクノロジーが進化してからというもの、リーダーが果たすことのできる役割は大きくなっていると言われている。スティーブジョブズは世界を変え、イーロンマスクが未来を作ると言われている。起業家の集まりに出ても、必ず一度や二度は社会を変える、世界を変えるという言葉が出てくる。

こういう気概を持った人々が生まれてくることは社会にとって有用だと思う。ただ一方でこういう流れが強くなるときに、全体が熱を帯びていってある種の熱狂状態に入る時があり、そういう時は冷めた目を持っていた方が戦いやすいと私は考える。信じるということは、ある立ち位置に偏るということで、客観性を失うということだ。

時代を振り返ると、いかなる英雄も条件によっては力を発揮できないし(そもそも英雄として名を残せないと推測する)また条件によっては誰でもリーダーにもなり得るのではないか。歴史のある時期に最も影響を与えたのは寒暖の差であると出口会長はおっしゃっていて、つまり寒冷で食物が十分に取れないことが人々を他の地域に進ませ、そしてそこで争いをうむ。その時集団を率いた人をリーダーと呼び、勝った方が歴史を書く。

私の引退後の人生はほぼ現役時代の名声によって支えられているけれど、その名声はTBSが日本で世界陸上をブランディングし広めていったことによって高められている。つまり世界◯◯などの他のスポーツのメダリストはここまでちやほやしてもらえない。自分の力で銅メダルを獲得したのは確かだけれど、その銅メダルを日本国内で権威付けたのは一放送局と広告代理店なのだろうと思う。

スポーツの世界では謙虚な人が比較的長くトップでい続けられる。それは成功の要因を広く見るというのがあるのではないかと思う。つまり、自分があの時勝ったのは、相手チームがたまたま失敗したからかもしれないし、コーチの見立てがよかったのかもしれない。謙虚な人は、成功の本当の理由はわからないと考える。謙虚ではない人は自分がやったことで成功したから、自分のやったことを分析すれば成功の法則は導き出せると考える。そして謙虚ではない人は、人生のある時期に勝利した時のパターンに固執し、錆び付いていく可能性が高くなる。

リーダが時代を作るのか、時代がリーダーを作るのか。いくら考えても決着はつかないように思う。いずれにしても私個人としては、宇宙や時代のゆらぎに翻弄される一個人であるというのを自覚しておくことが、勘違いしてマクロに逆らって滅びないために大事なことだと考える。